近赤外線撮像分光装置搭載高分散分光ユニットの光学設計
─ 国立天文台すばる望遠鏡殿
現在国立天文台すばる望遠鏡では、次世代の近赤外線領域の天体観測装置として、
高分散分光器(λ/Δλ=70,000)の開発の検討が進められています。
天文学において近赤外線領域とは、1〜5.5μmの波長帯を指しますが、
この波長域において上記の波長分解能を満たす観測装置は、世界的にも
実現されておらず、完成すれば「太陽系外にある第二の地球の探査」
など数多くの科学的成果が期待される観測装置として注目されています。
フォトコーディングは、本分光ユニットの光学設計を担当しました。
一般に分光器は、「波長が長くなるほど、波長分解能が大きくなるほど、
分光器サイズが増す」傾向にあります。それを、国立天文台および
東京大学らと共同で開発を進めているイマージョングレーティングという
新しい分光素子を用いることで解決しました。イマージョングレーティングは、
高屈折率材料を用いた回折格子で、その屈折率(n)倍だけ分光器のサイズ
を小さくできます。ここでは、イマージョングレーティングの材料として
シリコン(n=3.45)を用いています。さらに、光学系には透過系(レンズ系)
を採用しました。反射系に比べてデッドスペースが小さく、コンパクトな
設計が可能であり、かつ製造/アライメント公差も緩くできるという利点があります。
得られた設計解を図1に示します。サイズは、600mm(L) x 300mm(W) x 100mm(H)
に収まるスペースでこのクラスの分光器としては格段に小さなものです。
(例えば同様のスペックをもつVLT/CRIRESという装置は、回折格子だけで
200mm x 400mmの有効サイズがあります。)また、図2にPSFを示しますが
すべての波長域において、ストレール比0.88以上を達成しています。
⇒イマージョングレーティングについて詳しく知りたい方は
こちらをご覧下さい。

図1 : 高分散分光ユニットの光学設計結果
スリットから入った光は、コリメータ、イマージョングレーティング、クロスディスパーザ(補助用の反射型回折格子)、
カメラレンズを通って、検出器(赤外線アレイ)に結像する。
レンズは数種の赤外線透過材料を駆使することによって、透過系に固有の色収差を補正してある。

図2 : 波長2.072μm(=posD)、波長2.081μm(=posE)、波長2.091μm(=posF)での点像強度関数(PSF)
横列は、スリット上の位置の違いによるPSFを表している。
各ボックスサイズは75μm(エアリディスク直径は、約60μm)。
PSFが横長に見えるが、これは収差のせいではなくクロスディスパーザによるアナモフィック効果が原因である。